原 みちこ

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2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

海と夜景に映る 自分を、 眺めた。 それから、 あまりにも美しい 傍らの男を... ふたりは、 世にも幸福な男と女。 その時、 夏川が わたしの手を 握りしめた..

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

右手に 本日のリスト。 どれもが シェフの 珠玉の品の数々... 途中 それぞれの 丁寧な 説明がある。 オーナーの 自宅の庭の鎌倉野菜の 甘味... そのすべてが こだわりの 塩による 味付けだ。 料理によって、 塩を 使い分けていることにも、 わたしたちは気づ…

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

それから、 夏川とともに 一番の席へ... 楼閣の頂上。 ふたりは 海上に 浮遊する 未知の生き物だ。 たぶん、 これから 恋をするだろう、 海洋生物たちなのだ..

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

ふ頭の レストラン。 美しすぎる青色に 染まる店内... 大きな ガラスの向こうには、 果てしなく広がる海洋と 横浜の 宝石箱の夜景..

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

横浜... ここは いつも おだやかな午後から 一転して 劇的な日没へと 切り替わる場所...ふ頭まで 夏川の腕をかりて ゆったりと 歩く... 黒の 細紐が あしの甲で 絡まった 華奢なサンダル... わたしが 自分で買った。 高いヒールも すいつくように 慣れてきた…

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

セスナ機での 小旅行は、 断ったが 夏川は 明るく あきらめない 様子だった。 横浜の ふ頭にある、 神秘的な レストランバーに 予約を 入れてしまった という。 わたしは、 生成色の 総レースの ワンピースを、 手に入れた。 なんだか、 夏川の術に かけられ…

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

翌日、 響子と仕事場で 顔をあわせた。 夏川が、 友人を連れてくるので、 4人で 新島に行こうという。 彼のセスナ機だ... あれほど 直線的な申し込みのあとで、 どのような顔をして、 小旅行に でかけられるだろうか? だいたい 旅などというものは 電車にか…

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

男にとって こちらのほうが、 あたたかい のだろうか..

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

無言... それはそうだろう。 でも、 男が 帰ってくるのは、 この 木造アパート。

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

と その時、 ゴトッという音 とともに、 隣人の男が 目の前を 歩いていった... 景色を 眺めていた わたしに 気をつかったのか、 あるいは 自らを 隠したかったのか。 ............. 「いってらっしゃい」 おもわず、 声をかけた..

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

翌日は 快晴だった。 そして、 その日の思った以上の 夕暮れの美しさ... 部屋の 窓からは 果てしない野原が 広がっていて わたしは ただただ その美に 魅入り、 驚嘆した..

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

隣室から 男ふたりの話し声がした。 いつも とても静か... このあいだの日曜に、 年上のほうの男性の、 奥さんが来たのだ。 「なぜ帰らないんですか?」 ............. 「なぜ帰らないんですか?」 ............. 話し合いは まったく進まなかった。 力のあ…

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

ドレスを ハンガーに かけて、 黒蜜ミルクを 飲みながら、 夏川の後ろ姿を 思いかえした。 仕立ての良い チャコールグレーの スーツ... 「俺も 一人暮らしのころ こういう部屋に 住んでました...」 そんなわけない。 つい 微笑んでしまう... ...............…

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

わたしの あしもとから、 一陣の風が 吹いた... ミッドナイトブルーの ドレスの 裾が まるで、 さざ波のように 小刻みに ふるえた。

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

「これから先 ずっと 俺と一緒に いてくれませんか..」

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

だが 夏川は、 すぐには 車に戻ろうとは しなかった。 そして 背筋を のばして、 かたい表情をした..

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

つつましいが 快適な 女ひとりの部屋、 何を 臆することが あるだろう。 わたしは 礼をのべて、 夏川を 見送ろうとした。

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

いまどき めずらしい 木造建て。 わたしのアパートに 着いた.. 夏川は とくにひるむことは なかったが、 ちょっと意外 という表情をした。

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

都心から はずれたアパート... 道路工事を している その土埃は、 高級車には 不釣り合いだ。 夏川が 苦笑いした... 「悪趣味... これしか残ってなかったの あいつら 勝手に乗って いってしまった」 弟が二人... 夏川の、 可愛くて たのもしい 両腕だ..

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

そして 和やかな 会食を終え、 夏川が 送ってくれるという... 正面には、 腰をかがめずに 乗ることができる、 日本に 何台もないであろう 高級車。 ドアを開け 手をそえてもらう... ........... わたしは、 深呼吸した。 そして、 生まれてはじめて 哀しい夢…

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

大皿の料理が いくつも 運ばれてきた。 北京ダックの 見事な色艶... パリパリの まわりの皮とは 対象的な 肉の柔らかさ。 それを ごく薄いパンに 巻いて口に入れる。 蜂蜜ベースのたれが、 天上人の献立を 想像させる。 極上の味..

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

扇形のソファに、 4人で 腰掛けた。 わたしを中心に、 左右に 男性たち、 響子は 上杉の横にいるので 遠くなる... 何を話せばいいのか、 とまどう... 「お休みは なにを されているのですか?」 夏川がたずねてきた。 .............. 日舞をすこし... 「和服…

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

4人で 食事にむかう。 都会の中に 堂々たる構え の店に着いた。 中国名で 〈緑色の平原〉 ............. ドアまでの途中、 夏川が わたしを エスコートした。 右肘に かるく手をそえて、 気をつけて と言う。 慣れない ピンヒ一ルには ほんとうに ありがたい…

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

そして 夏川... 神秘的である。 おっとりと しているようで、 強い。 この世界のために なにかをしてやろう... という 心意気が、 伝わってくる。 顔立ちは といえば、 ............. たいへんに 美しい... とくに唇の美しさ。 アルカイックスマイル... 若き…

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

待ち合わせの カフェに 着くと、 男ふたりが 一番奥の席にいた。 たがいに、 信頼しあっている様子だ。 深刻な親しさ、 とでも 言うのか、 上杉と夏川がいた。 わたしたちの外車など、 はるかに 上のクラスの車に 乗っているであろう 表向きは、 経営者。 じ…

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

そのドレスを 身につけてみると、 靴同様に 新品だった... 「一度着たけれど 地味すぎて 話にならないから あげる」 ............... 響子は そう言ったが、 違う。 これは 彼女が、 わたしのために 真剣に 選んでくれた 品々だ.. 鏡の中に、 べつの 美的が…

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

「逢わせたい人がいるの... 金曜の夜 でかけるからね」 わたしたちは、 外資系の自動車メーカーにいる。 響子はディレクターとして、 大変に有能。 わたしは経理、 という肩書きだが この世界は特殊で、 二重、三重にも 複雑な役回りが必要と された。 「こ…

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

彼女の顔の 不思議な美しさ... 内側から 浮きあがってきたような 印象。 かなり濃いベージュの 肌の 大きな目は、 何重にもシャドーが 取り巻いている。 グラデーション、 というのだそうだ。 「美的にもやってあげる」 ............ ありがたいとは思う。 …

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

エキゾチックな猛女 とでも いうのだろうか。 「美的を 変えてやる」 わたしの腕を 抱えるようにして、 一緒に歩く... いつも体温が高い。 ふたりで こうしていると、 女優と 付き人に 見えるだろうか..

紅香の愛・Benica・東京年華 MITEKI

そして また いつものように わたしは口紅をつけず、 髪をまとめている。 ............. そんなわたしを 見かねて、 同僚の響子が 声をかけてきた。 「あんたさ.. 弔ってる場合じゃないよ」