2013-04-01から1ヶ月間の記事一覧
そして 京都への 道行きだった... .................... 3年の 月日が流れ、 ゲンは21にして 腕の良い宮大工。 借金も返し終え、 やよいは 太一という男の子を 授かった。 こうして、 ゲンとやよいは、 なくてはならない ひとつになった。 そして ずっとお互…
行き着いた先の 草履屋の夫婦が、 二人を見て すべてを 察した。 慌ただしく 旅支度を 整えてくれると、 ゲンとやよいを 送りだした。 太陽が 東の空から 大きく 顔を だそうとしていた..
ゲンは やよいを引き寄せる... 言葉はいらなかった。 着の身着のままで 手に手をとって、 走る、 そして走る。 もう ふたりの頭の中は、 なにが善で なにが悪なのか、 わからなくなっていた。 ただ はっきりとしていたのは、 明日、 天変地異が起きたとして…
手をとると、 四月の花冷え。 やよいの いつもは白い手が、 さらに青く透き通っていた... 「おまえ いつからここにいたんだ」 やよいは 答えるかわりに、 ゲンの腕に、 しがみついてきた..
あれこれ 考えても まとまりはしなかった。 一睡もしないまま 明け方になっていた... ゲンはまた 谷中へと 歩いた。 そして 井戸の傍らに しゃがみこむ やよいを 見つけた。 顔を のぞきこむと、 これもまた 木偶の坊の 片割れであった..
命ってやつは なんだろう... とゲンは思った。 俺は、 ただぐるぐると やよいの周りを回っている 木偶の坊に すぎなかった... 俺には もともと 命なんてものはなかったのだ..
根津の家まで ふらふらと どう帰ったのか... 気づくと 明け方になっていた。『俺は死んだ』
気がつくと、 谷中の 小さな家である... 古い居間、 花嫁衣装のそばには やよいが 座っていた。 「やよい...」 「あ」 ゲンを見ると、 滝のように 涙を流した。 「どうしようもないの うちに借金があって..」
こんなことに なるんだったら、 俺は どんなことでも やってのけたのに... ゲンは 持っていた手拭いを 荒っぽく 首に巻き付けると 一目散に 駆け出した..
「お嫁入りが 決まったんだよ」 家主が でてきて言った。 「あんたのこと 待ってたみたいだった けどねぇ」 近くで カァカァという 鴉の鳴き声がして、 ゲンは 己自身の馬鹿を 思い知った..
ある夕方、 いつものように 駄菓子屋に 立ち寄るゲン... 「あれ やよいちゃんは」 ..
駄菓子屋の、 看板娘のやよい。 汗まみれの ゲンさんが、 銭湯に行く前に かならず 寄っていく... 「お帰り」 削った木の 澄んだ匂いで、 小さな店が いっぱいになる..
ゲンさんは十八に なったばかりの 宮大工。 やよいは十七、 ふたりは 幼なじみであった..
痩せた顔を もぞもぞと下にむけて、 彼は 顔を赤くした。 「それは僕も ひどいとおもっている」 ................ そして 見せてくれたのは 差し押さえだの、 借用書だのの 束... 「ぜんぶ あなたのためだったんだよ」 元の夫は 泣いてしまった。 ..........…
早いタ飯が 片づけられ、 ふたりで TVを見ていた。 時々、 爆笑... ...... わたしは 赤いポットで お湯を沸かしながら、 初めて たずねた。 .............. 「なぜ あなたは ひとりで 帰ってしまったの」
............... そして、 〈回復〉。 なんていい言葉 だろう。 目が覚め、 流動食から 普通の食事へ... 奇跡みたいな ことだった。
「あの人は弱いのよ」 と 姉が言っていた。
ときどき、 足をさすってやる。 結婚していたころ のように。 いや、 それより もっとやさしく... 一度、 わたしを置いて 故郷に帰ってしまった男なのに..
それが 昔の夫ともなると、 複雑である。 わたししか 東京には、 身寄りがいないのだ。 会社から の帰り、 病院に行く。 .............. 意識のない相手に 話しかけるために..
集中治療室 なんて 好きな人はいない。 鎖に繋がれているみたいな 場所だ..
「ママちゃ〜んっ!!!」 みつかった... これほど とおいのに。 ふたりは タクシーごと つかみかかると、 あたしに、 五千円札を 握らせようとした。 「なに?!!!」 「いままで ありがとう」 ........... 「あたしにくれるの?」 ふたりは 大きくうなずいた。 …
帰国の朝、 なんでしょう 急に 子どもたちが 造ってくれた指輪を、 クッキーの古い缶に 入れて置いたのを 思いだした。 あれだけは 持って帰らないと、 あたしは一生 後悔する。 エリナさんの化粧ポーチから 落ちた でっかいラインスト一ンが くっついている…
そして半年になる前に、 あたしは ひそかに、 部屋を解約した。 それから羽田空港近くの ホテルに、 二週間滞在... お土産物を 一族の 全員分買うという 大仕事。 マッサージの仕事のほうの 退職金は 想像以上だった。 功労者だって... あたしの登録番号は …
お買い物にも ふたりを 連れてゆく。 「お子さんですか?」 「違います」 と冷ややかに応じる。 これで4ヶ月もたった... はやいとこ 帰国しよう。 そのあとの日々は、 リュウさんや 両親、親戚たちとの ほぼ休日... 子どもを生み 店をまかせ み〜んな だれか…
休日には 公園にも 連れてゆく。 勇太のほうは、 サッカーボールで リフティングみたいな ことを やっている。 女の子の 奈奈のほうは、 木のぼり。 この子は部屋でも ソファのふちを、 綱渡りのように 器用に歩いたりする。 「お子さんですか?」 と聞かれ…
その後は、 フィギュアの怪獣と 戦闘機の 死闘が 30分... いったん中座しようと すると、 「この最期が 観たくないのっ?!!!」 .......... で、 観る。 すると 戦いのあとって 両方疲れきっていて、 すこし感動的なんだよね〜。 「昔、日本には 戦争があった…
しかたなく お父さん不在のまま、 コントは 進展する。 あたしは、 仕事先から オモチャのケータイで 奈奈にデンワする。 「きょうは まっすぐ帰る」 あたしは何者なのか?
夕食あと、 きまって ママゴト... 男の子のほうの 勇太に 「あんたが お父さんになって」 というと、 いやだと首を振った。 「うち お父さんいないの..」