しかし 資料は揃っているので、 ついに パンドラの箱を 開けた。 SNS..

なにを不満に 感じる必要があるのか。

やりたいことを おもいのまま ようにやり、 愛する人もそばにいる..

それから 20年がたった..

とにかく わたしは、 行かなかった。

それと、 自分自身の 黄金期でもあったのだ。

外資系企業に 就職したばかりで、 とても 予定外の 休暇は切り出せなかった。

わたしは 行くことが、 できなかった。

「休暇で 友人たちと ハワイに行く よかったら 向こうで逢わないか」

それから 4年の歳月が流れ、 カリフォルニアからの 手紙で 目が覚めた。 スティーブンからだった。

搭乗ロへと、 エスカレーターで 降りて行く姿。 それが、 彼を見た最後 だった..

些細なことで 言い合いになったまま、 空港で 見送った。

それから、 しばらくの 厳しい研修ののち、 彼は わたしの住まいに、 もどってきた。 帰国直前であった..

しばし 優秀な彼らの あいだにいて、 コンパや ドライブや、 山歩きをしたが... 都会の喧騒のなかで つかのまに見た 夢のようだった..

それから わたしは、 彼の地方の研修先に呼ばれた。 大勢の 医大生たちの サークルにも参加して、 スティーブンの恋人として 紹介された。

その夜は、 全員で 飲み会になった。 ユースホステル のような 健全な一室だった..

外科医の 研修生、24才。 台湾系の アメリカ人..

彼は 二階のカウンター席で、 友人と 飲んでいた。 だが バーテンダーの 好意で、 英語を解す わたしともう一人が 呼びつけられたのだ。

日本でナンバーワンの、 超一流のクラブで 出逢った。

わたしの かけがえのない、 恋人。

彼が この日本に、 滞在している いまこの瞬間は。

タツオは わたしの好きな男..

......... それに尽きる。

なんて さみしい男なのだろう... 彼を しあわせにして あげたいと、 心から想っていた。 しかし それは、 わたしの役割ではなかった 。 やつが 幸福を感じるためには、 内面から 湧き起こる 誰かを守りたいという気持ち..

「なにも ありません」 わたしは 両手で空を切ると、 その場を 飛びだした。 警官の皆さまには 頭を下げたが、 彼のことは一切見なかった。 暗い道を 堂々と 歩いているあいだ、 なにも 感じなかった。 ..............

........... わたしは しぶしぶ判子を 押した。 「なにか お二人で お話されたいことでも あれば」

「会社の上司に 来てもらうように 説得したのですが そうすると クビになると 言うのです」

「県警なめんなよ」 と わたしは、 彼を威嚇した。

署内が、 蒼然とした。

「わたしは 押しませんよ」