2014-09-01から1ヶ月間の記事一覧
ニ週間後には、 オーディションがある。 正確には、 予選の予選だが.. 踊るのは 「火の鳥」
まあ ベリーダンスといっても、 わたしのは 素足で踊るジプシー系。 土着民が、 素朴に呼吸している 風体。 長いハイヒール生活の 後遺症である、 外反母趾も 目立たなく なってきた..
実業家になった 清史郎に、 ついて行くのだ。 先月の帰郷で、 母親には 大金を渡している... 濃紺のスーツと 黒いヒール靴、 小ぶりの帽子。 「千鶴子さん まだかい」 はい と大きな声をあげて、 彼女は 開いた真っ赤な ボストンバッグに、 書き込みのせいで…
Sure... と応えて、 千鶴子は 自分の部屋に 駆け戻った。
「英語のほうはどう」
「すぐに 支度だ」
生成りの 麻のスーツと、 焦げ茶のトランク。
日焼けした 精悍な顔。
清史郎だった..
快晴の朝だった。 千鶴子が、 玄関の四隅を ていねいに 箒で掃き出していると、 音を立てて 戸を開ける者があった。
東京... 好奇心に 満ち満ちた、 大猫。 その風貌は いかにも 堂々としていて、 軽妙洒脱... 私たちは たちまち魅了されるが、 彼らは 一瞬にして 軽快な風に飛び乗り、 立ち去ってしまう..
もうしばらくして、 見通しがついたら、 故郷に 帰るのだ... 千鶴子は 肝に命じていた。 .............. じつに幸せで、 活発な日々だった..
家の中の 切り盛りは 見習い女中のキヨと、 書生のシンジが よくやってくれている。 自分が そうしてもらったように、 とくに 目を光らせたりはしない。 ある程度のことを 言い含めて 適当に任せると、 自ら工夫して 懸命に働いてくれた。
清史郎が 渡米して以来、 なにか 人生の すべてを、 やり尽くした気が していた。
透きとおる風が、 千鶴子の 頬をかすめる。 これで 日中はまた、 働く背中に 汗が流れおちるのだが..
