原 みちこ

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2013-01-01から1年間の記事一覧

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち..完

それでも彼女は、 いままでの態度を 一変した。 「気になって 気になって...」 と言いながら 駆け込み、 お金を渡すと 自分作成のお返しメモに、 自分ではんこうを押し それをしまい あわただしく、 帰っていったそうだ。 ほんのすこしの 良心... やす子さん…

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

ときに 野生の生き物たちが、 新鮮な はじらいを みせたりすることがあるが、 それはたぶん やす子さんには 必要ないことなのだろう。 彼女は なにも怖くないのだ。 おそらく 神すらも... 彼女は 生きていた。 自分の正義を 生きていた。 あまりにも 単純な …

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

仕事を終え 帰宅すると、 きのう やす子さんが お金を返しにきたと いうことだった。 毎月末 一万円ずつ 返しにくると、 彼女が 自分で 決めていたのだった..

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

しばらくして わたしと彼は、 園のはずれの ひろい木製の 椅子に 腰掛けて、 ふたりで1本の 缶の紅茶を飲んだ。 その高台からは 淡い緑色の街並みが、 一望できて、 すこし遠くから さきほど 足の裏を なでてやっていた 九官鳥の 呼ぶ声が聞こえた。 「さよ…

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

わたしは その不思議な時に、 蒼白に なりながら、 ふらふらと 野鳥の檻のまえにいた。 そして あきらかに、 王とおもわれる 大鳥に 近づいた... 彼は、 その 精悍な瞳を ゆっくりと閉じた。 それから、 アンデスの 高い高い岩山を 夢のように わたしの 脳裏…

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

つぎに ペンギンの 群れのまえにゆくと、 女性カメラマンが 一眼レフをかまえて、 彼らの決定的瞬間を 待っていた。 許婚も、 スマホをかかげたが まったく なにも起こらなかった。 彼らは ただの 冬の、ペンギンたちだった。 ................ 写真家が去り…

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

翌日は よく晴れた 冬の動物園である。 森の中にある、 すこし不可思議な その里は、 それぞれの 生き物たちが密接で、 自由でもある。 巨大な 陸亀が、 低い塀を 乗り越えようと していたが、 スタッフは お構いなしである。 「ま 一度も成功したことは あ…

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

姉との くだりを語ると、 彼は、 「ん〜 ふたりの陰で、 ぼくは 靴を手にして そっと逃げだす だろうね」 といった。 たしかに、 男性を 震撼とさせる 内容なのだ..

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

夜になり、 お風呂上がりの 濡れた髪を 恋人に ドライヤーで乾かして もらっていた..

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

ただ それだからといって、 目上の方に そのようなことが できるだろうか。 小津映画特集に 書いてあった。 できるけれど、 やらない俳優が 最上級だと... ............. わたしは 二泊だけの 短いリゾートで、 ホテルの部屋にいた。 きもちを おちつけて、 …

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

「わたしはできます」 ............... 「あんたはできるのね」 「できます」 ...............

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

......... つよい言葉... しかし ひるむまい。 わたしは 下腹に力をこめて、 しずかに 声を絞りだした。

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

彼は淡々と その話を聞くと、 「人から軽んじられるのは、 いやだよね」 といった。 「でももう おわったことなのでしょう」 と おだやかに完結した。 わたしは、 くちづけ を唄った... 夕方 姉と電話が つながったので、 一部始終を話した。 「お金を借りる…

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

ただ、 いま目の前にいるのは、 恋人だけ。 しずかな カラオケルームで ふたり... 男の人は こんな話はぜったいに ひいてしまうだろう。 .......... しかし aiko 唄うまえに、 話してしまおう..

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

話が できるだれかが ほしい... 分析力のある夏美さんか、 粉砕力のある姉。 ほかに、 母の日本舞踊の先生。 とにかく、 女の人でなくては..

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

シンプル 高級感 黒髪 脚 ... ヨーロッパの 元貴族と結婚していた マダムが、 数年前 わたしをみて そういった。 その後 期待に応えるべく 努力は してきたが、 さて内面はどうだろう。 たとえば、 小津映画に でているような 原節子が、 人に塩なんて 捲く…

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

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紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

人というのは こうであるべきだ。 義理人情だか 被害妄想なのだか わからないが、 おなじ話を 堂々めぐり。 それより、 スパッと 切ろうではないか。 わたしが ゼロと いったら ゼロなのだ。 この 囚われの 哀しみ漬けの 脳の人々... 言いがかりを つけてき…

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

小田さんは 実に 行動力がある。 「旅行に 行くから...」 といって 返してもらい、 ほんとうに 旅行に 行ってきたのだから。

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

母が友人の 小田さんに、 その話を したところ、 彼女は 「え あなたからも 借りているの」 と電話をきり、 お金を 取り返しに 行ったそうだ。

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

翌日 母と映画に行く。 途中 その話題に なったが、 「わたしはあんまり」 ....わたしはあんまり 気にしていない? .......... がっかりして からだと心が、 熱くなった... いぜん 自治会の 後任に なってもらったから とはいえ、 過去に 再三 そのようなこ…

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

なんという ありさまだ... まったく ばかばかしい。 生まれて はじめて、 人に 塩などを 撒いたのだ..

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

すこし先の 通りから、 やす子さんが 自転車で 走り去った。 こちらを 見ていた その顔が、 凍りついていた..

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

早い。 すでに やす子さんは、 玄関にも いなかった。 ドアを開けると、 まだ 自転車のところに いた。 鍵で てまどっているのだろう。 いったん 閉め、 開ける。 いない! おもっきり 左右に ありったけの 塩を撒いた。

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

わたしは 追いかけ、 「塩もってきて」 と言い放ち、 自分で 台所から 塩を もってきた。

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

さてと... やす子さんと 目を 合わせようとした瞬間 ものすごい勢いで 逃げだした。 ............... 慣れている。 説教に 慣れているのだ..

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

勢いこんで 下に降りると、 「柿をいただいたので 林檎をさしあげて」 ...... 拍子抜けしたが また2階に上がった。 まったく のどかな話だ。 赤いのを より分け、 袋にいれ 再び茶の間にもどった。 母が 最近 手入れした家の石庭の 説明をしている。 真ん中…

紅香の愛・Tokyo Benica・冬のペンギンたち

意識が バッハの 二短長に切り替わった。 「お話があります」 わたしが告げて 上への 階段を かけあがる途中、 「話があるんだって〜〜」 やす子さんの 実に気楽な 声が聞こえた。 ..................... 『おまえのことだっ!!!』 わたしは 黒い横縞のニ…

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

夕暮れ前の 帰り道を なぜだか せかされて戻る。 『商店街の ドラッグストアで シャンプーは買わない 角の カスタードクリームが 新鮮なパン屋には 寄らない』 と 頭の中で念を押す。 10分で 着くと、 来客がいた。 やす子さん... カーラーを巻いた頭に スカ…

紅香の愛・Tokyo Benica・冬の、ペンギンたち

審美歯科の うでの良い先生にも 恵まれ、 となり町まで 通っている。 先生は わたしの保険証をみると 懐かしいという。 先生は画廊、 奥様はお買い物へ、 そして 待ち合わせ。 奥様が亡くなられてから 銀座に 行くことはなくなったと それでも、 先生は明る…