気がつくと すべての 景色が消えていた。 野生が、 オーダーをとりに 席に立った... まわりを 見渡すと、 もちろん 藤城はいなかった。 たぶん だいぶまえから... 本能的に 店を飛び出した。 降りしきる雨... 行き交う人々... .............. 彼は わたしを …

わたしと 野生は、 すっかり 意気投合し 話しこみはじめた。 背後で 藤城が、 言葉もなく 青ざめているのが わかった..

藤城が すこし目を離したすきに、 さきほどの 野生の男が テーブルに やってきた。 ま たまに 人生の中で、 滅多になく 華やいだ夜が あるものだ。

わたしは この男に備わっていない ものを 探すことが、 困難にすらおもえた。

男は、 滝城 という名で そのとおりの、 精悍さを もっていた。

そして、 それが 五たび 繰り返された。

化粧室に行き 戻ると、 新たな ジンジャーエールが テーブルに、 置かれていた。

己自身が認める 己の評価は、 低すぎたのかも 知れなかった。

ほんの少しだけ、 別の世界に 足を踏み入れたことで、 奇跡が起きた。

いままでの 生活が、 嘘のようだった。

全員 一流企業の同僚たち。 日焼け男が、 バングラデシュから、 帰国したための 祝いの夜だった。 完璧男は、 5分で 行動に起こした。 彼の名刺を、 もらったのだ。 会社の電話番号の裏に、 携帯と 自宅の両方が、 勢い良く 記されていた。 ............... …

均整のとれた 背の高い スポーツマン。 とびっきりの 爽やかな 顔立ち。 あとの一人は、 やはり はにかんだ 日に焼けた顔の 人の良さそうな男だ。

彼ときたら、 哀しいくらい 完璧だった。

ア一ティストの横にいた 感じの良い男が、 すこし 高揚して、 わたしを 見ていた。

それから すぐに、 わたしたちは 打ち解けた。 グシナさんの 力強い美は、 初対面の人々を 安心させる。

「どうも」 眼鏡をかけた ア一ティスト風の男が、 先に声をかけた。

........... と、 3人の日本人男性が わたしたちに 気づき、 近づいてきた。 小さく感嘆の声を あげながら..

しかし、 依然として 彼はこちらをみない。

彼をみつめる..

彼は沈黙したまま、 こちらをみない。

彼をみつめる..

屈強な体に、 不釣りあいな、 甘い 端正な顔立ち。 彼はとくに、 だれかと 語りあう わけでもなく、 ただまっすぐ 前をみつめて、 瓶ビールを 飲みつづけていた..

着慣れた緑色のチェック のシャツと、 デニム。

しばらくのあいだ、 隅にある 生け花のような 気分だったが、 場に慣れてくると 人々の顔が はっきりとしてきた。 なにも感じずとも、 時間というものは 静かに 容赦なく 過ぎていってしまう。 価値あることが、 人と人との出逢いという ことだけとは、 限ら…

じぶんが 血の通っていない 装飾品に、 おもえた...

ソウルロック調の 大きめの音に、 白人男性たちが 瓶ビールを 片手に、 彼らのための 地球上で 彼らのための 黄金期を 味わっていた。

7cmの 黒いサマーサンダル あわせ、 化粧ポーチが みえ隠れした ミニ籠バックを もっていた。

わたしは というと、 和製ブランドの やはり 薄紫の、 タイトスリット入り ワンピースドレス。

なんでもない ごくあたりまえの デザインが、 彼女が身につけると 格別な 小粋感だ。

はぁ くらくらする。 それをぐっと 抑えて、 冷静にふるまうの。 グシナさんは... と見ると、 もう 注目の的である。 水を得た魚 とは まさに彼女の ことである。 薄紫の小花柄の パフスリーブのブラウスと、 すこしだけ膝上の 蒼紺のボックスプリーツ。 ピ…