原 みちこ

ASIA ASIA

紅香の愛・Tokyo Benica・ホテルカンヌの、夜明け・映画祭..完

偉大な王の傍らに
いるのは、
このわたしではない。
......
「ありがとうございました
もう眠らなくては」

わたしは
彼の手をすり抜けた。
また続きはスクリーンで..
夢をみているかのように、
哀しげなスターを
残したまま
わたしは
クラッチを脇に抱え、
VIP棟の通路を走った。
マキシ丈のドレスがからまり、
よろける。
なにも
頭になかった。
自分の部屋の扉に
ようやくたどり着いたところで、
夫が待っていた。
「やあ
なにも食べられなかったのでしょう」
白い大理石のテーブルの
上には、
塩昆布の
お茶づけ。
..............
ここに辿りつくまでの、
なんという
迷路だったことだろう。
「待っていてくれたの」
わたしは
汗だくで
笑いながら、
彼の首筋と
夜明けの匂いを
おもいきり
かいだのだった..

またお目にかかる日まで、
輝く光りの仏陀よ。

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